電子契約「立会人型」と「当事者型」の違い|中小はどっちを選ぶ?法的効力と選び分け
Editorial / 契約・法務

電子契約「立会人型」と「当事者型」の違い|中小はどっちを選ぶ?法的効力と選び分け

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取引先から「今後は電子契約でお願いします」と言われ、届いたリンクをクリックしたら、メールアドレスの認証だけで契約が締結された。ハンコも印鑑証明も出していないのに、これで本当に有効なのか。小さな会社が電子契約に触れた最初の戸惑いは、たいていここにあります。

電子契約サービスを比較する前に、一つだけ知っておくと迷わなくなる区別があります。「立会人型(事業者署名型)」と「当事者型」という2つの型です。ざっくり言えば、立会人型は認印、当事者型は実印に近い。そして中小企業の日常の契約は、ほとんどが立会人型で足ります。

この記事は、2つの型の違いと法的効力を整理して、「うちはどっちを選ぶか」を判断できるようにするものです。サービスの機能や料金の比較は、その次の話。まず、型と法的な裏付けから見ていきます。

【重要】 本記事は2026年7月時点の法令・公的機関の公開情報に基づく一般的な解説です。個別の契約が有効に成立するかは事案により異なります。重要な契約や、電子署名の証拠力が争点になり得る契約は、弁護士等の専門家にご相談ください。

まず結論:日常は立会人型、実印級だけ当事者型

先に、意思決定の結論を出しておきます。細かい理屈より、まずここだけ持ち帰ってもらえれば十分です。

  • 発注書・見積書・NDA・業務委託契約・取引基本契約 → 立会人型で足りる。相手はメールで署名でき、導入も運用も軽い。中小企業の契約の大半はこちらです。
  • 金銭消費貸借(借用書)・不動産・連帯保証・対外的に実印性が強く問われる契約 → 当事者型を検討。本人性の担保を一段強くしたい場面です。

迷ったら「この契約、紙だったら認印で済ませていたか、実印を出していたか」を思い出してください。認印で済ませていたなら立会人型、実印を出していたなら当事者型を検討する、という当たりの付け方で、ほぼ外しません。

2つの型は、何が違うのか

違いは「誰の、どの鍵で署名するか」です。ここだけ押さえれば、あとの理解が早くなります。

当事者型:本人名義の電子証明書で署名する

契約の当事者本人が、認証局が発行した本人名義の電子証明書(署名鍵)を使って署名します。「その人自身が署名した」という結び付きが強く、本人性の担保はもっとも高い方式です。反面、契約する双方が事前に電子証明書を用意する必要があり、相手にも同じ準備を求めることになります。

立会人型(事業者署名型):サービス事業者の鍵で署名する

利用者の指示を受けて、電子契約サービス提供事業者名義の署名鍵でシステムが署名します。本人であることは、メールアドレスの認証や二要素認証などで担保します。相手はメールのリンクから署名するだけで、証明書の準備が要りません。手軽で相手の負担も小さいため、いま実務で広く使われているのはこちらです。

「立会人型は認印、当事者型は実印」というたとえは、この本人確認の強さの違いをイメージするうえでは便利です。ただし後で見るとおり、効力の優劣(有効か無効か)の差ではありません。ここを取り違えると、必要以上に当事者型にこだわって導入が止まってしまいます。

「法的に大丈夫か」の答え

電子契約に触れた人が最初に不安になるのが、この点です。結論から言えば、立会人型でも契約は有効に成立し、証拠としての力も認められ得ます。根拠を順に見ます。

電子署名法が定める「電子署名」の2要件

電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)の第2条は、電子署名を「①その情報が、署名した人の作成に係るものであることを示す(本人性)」「②情報が改変されていないか確認できる(非改ざん性)」という2つの要件で定義しています。この2つを満たす措置が「電子署名」です。

第3条の「推定効」と、その要件

第3条は、本人による電子署名が行われているときは、その電磁的記録は真正に成立したものと推定すると定めています。裁判で「この文書は本人が作った本物だ」と主張しやすくなる効果です。ただし条文には「本人だけが行うことができることとなるものに限る」という限定(固有性の要件)があり、またあくまで推定なので、反証によって覆り得ます。「3条があれば裁判で必ず勝てる」というものではありません。

2020年の三省Q&Aで、立会人型はどう整理されたか

立会人型は事業者名義で署名するため、「本人性の要件を満たすのか」が論点でした。これについて、総務省・法務省・経済産業省が2020年に連名でQ&Aを公表しています(2条に関するQ&Aが2020年7月、3条に関するQ&Aが2020年9月)。

  • 2条について:事業者の意思が介在せず、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化される設計であれば、立会人型も電子署名法2条の「電子署名」に該当し得ると整理されました。
  • 3条について:利用者本人の意思に基づく操作であることが十分な水準で担保されれば、推定効も及び得るとされました。その一例として二要素認証(パスワードに加えてSMSやトークンでの確認など)が挙げられていますが、これは例示であって必須ではありません

注意したいのは、Q&Aは「一定の条件を満たせば該当し得る/及び得る」という整理であって、どのサービスにもお墨付きを与えたものではない、という点です。最終的な判断は個別の裁判所が行います。とはいえ、実務では立会人型で結ばれた契約が広く使われ、証拠力も認められてきています。「立会人型は法的に弱い」という古いイメージのまま選択肢から外す必要はありません。

どっちを選ぶ:型の選び分け早見表

自社が結ぶ契約を、この表に当てはめてみてください。多くの中小企業は、圧倒的に立会人型の行に集まります。

契約の例向いている型理由
発注書・見積書・注文請書立会人型日常的で件数が多い。相手の負担を軽くしたい
秘密保持契約(NDA)・業務委託契約立会人型本人確認は認印相当で十分。締結スピード優先
取引基本契約・賃貸借(一般的なもの)立会人型継続取引の土台。相手も登録不要で運用が回る
金銭消費貸借・連帯保証・重要な担保設定当事者型後で本人性が強く争われ得る。担保を一段強く
相手(大企業・官公庁等)が当事者型を指定当事者型相手の運用ルールに合わせる必要がある

自社の意向だけでなく、相手が指定する型があればそれに合わせるのも実務では大切です。相手が当事者型でしか受け付けないなら、その契約は当事者型で進めます。

コストと運用の、地味だが効く違い

法的な話とは別に、日々の運用で効いてくる差があります。ここを見落とすと、導入したのに相手に嫌がられて紙に逆戻り、ということが起きます。

  • 相手の準備:立会人型は、相手はメールのリンクを開いて署名するだけ。アカウント登録も不要な場合が多い。当事者型は、相手にも電子証明書(マイナンバーカード等)の用意を求めるため、相手が個人事業主や小規模だと負担が重くなります。
  • 単価:立会人型は1件あたりの送信料が安く、当事者型は証明書のコストが乗るぶん高くなる傾向があります。件数が多い日常契約ほど、立会人型のコスト優位が効きます。
  • スピード:相手の準備が要らない立会人型は、送ってから締結までが速い。商談の熱があるうちに締結まで持っていけます。

多くのサービスは立会人型を中心に提供し、GMOサインやfreeeサインのように両方の型を1つのサービスで使い分けられるものもあります。料金やプランの詳細は改定が速いので、実際の選定時は各社の公式で最新を確認してください。サービスごとの機能・料金の比較は、電子契約サービス比較 2026 にまとめています。

型が決まっていて、中小・フリーランスで手早く始めたいなら、締結から保管・全文検索・期限アラートまで一気通貫でき、IT導入補助金にも対応する立会人型の KANBEI SIGN が導入しやすい選択肢です。

よくある誤解を、実際のシーンで解く

「立会人型は本人が押していないから無効」?

いちばん多い誤解です。立会人型は事業者名義で署名しますが、利用者の意思に基づいて機械的に署名される設計であれば、電子署名法2条の電子署名に該当し得ると三省が整理しています。契約は有効に成立し、証拠力も認められ得ます。無効ではありません。

「電子契約は紙より法的に弱い」?

弱くありません。むしろ、いつ・誰が・どの文書に署名したかがログで残り、タイムスタンプで改ざんが検知できるぶん、紙より立証しやすい面もあります。「なんとなく紙のほうが安心」は、根拠のある不安ではありません。

「電子契約書は印刷して保管すればいい」?

これは明確に誤りで、実務上いちばん危ないポイントです。電子契約で締結したデータは電子帳簿保存法の「電子取引データ」に当たり、電子データのまま保存する義務があります。宥恕措置は2023年末で終了し、2024年1月から本格義務化されました。紙に出すだけでは要件を満たしません。詳しくは 電子帳簿保存法の保存要件 を確認してください。

型を決めたら、サービス選びと導入へ

ここまでで、「うちの契約は立会人型で足りる/この契約だけ当事者型」という判断ができるようになったはずです。型が決まれば、あとはサービスを選んで運用に乗せるだけです。

サービスごとの機能・料金の比較は 電子契約サービス比較 2026、実際の導入手順は 電子契約の導入ガイド にまとめています。締結する契約書そのものの雛形は、当サイトの 業務委託契約書ジェネレーター(無料) でも作成できます。まずは印紙も郵送も要らない日常の契約から、立会人型で一歩を踏み出してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 立会人型と当事者型は、何が違うのですか?

署名の仕組みが違います。当事者型は、契約当事者本人が認証局の発行した本人名義の電子証明書(署名鍵)で署名する方式で、本人性の担保が強い一方、双方が証明書を用意する手間がかかります。立会人型(事業者署名型)は、サービス提供事業者名義の署名鍵でシステムが署名し、本人性はメール認証や二要素認証で担保する方式で、相手も登録不要で手軽なため実務の標準です。「立会人型は認印、当事者型は実印」とたとえられますが、これは本人確認の強さのイメージで、契約が有効か無効かの差ではありません。

Q. 立会人型は法的に有効ですか?裁判で不利になりませんか?

有効です。適切に運用された立会人型は、電子署名法2条の「電子署名」に該当し得ると、2020年に総務省・法務省・経済産業省の三省がQ&Aで整理しています。さらに、利用者本人の意思に基づく操作であることが担保される固有性の要件(二要素認証などが一例)を満たせば、3条の「真正な成立の推定」も及び得るとされています。ただし推定はあくまで推定で、反証によって覆り得ます。「立会人型は本人が押していないから無効」というのは誤解です。

Q. 中小企業は、どちらを選べばいいですか?

日常の発注書・秘密保持契約(NDA)・業務委託契約などは、立会人型で足ります。相手はメールで完結でき、導入の負担が軽いためです。一方、重要な金銭消費貸借や不動産取引、対外的に実印性を強く問われる契約は、当事者型を検討します。当事者型は契約の相手方にも電子証明書(マイナンバーカード等)の準備を求めるため、ハードルが上がる点に注意してください。相手先が指定する型がある場合は、それに合わせます。

Q. 電子契約で結んだ契約書は、紙に印刷して保存すればいいですか?

いいえ。電子契約で締結したデータは電子帳簿保存法の「電子取引データ」に当たり、電子データのまま保存する義務があります(宥恕措置は2023年末で終了し、2024年1月から本格義務化。規模を問わず全法人・個人事業主が対象)。主要な電子契約サービスは、タイムスタンプ付与や検索要件を満たす形で保存できます。詳しくは電子帳簿保存法のガイドを参照してください。

参考にした法令・一次情報

  • e-Gov法令検索「電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)」第2条・第3条
  • 総務省・法務省・経済産業省「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」(電子署名法2条1項関係・2020年7月/3条関係・2020年9月)
  • 国税庁「電子帳簿保存法」(電子取引データの保存義務・2024年1月本格義務化)

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の契約の法的有効性を保証するものではありません。個別の判断は弁護士等の専門家にご相談ください。