法人決算・法人税申告を自分でやる手順|必要書類とe-Tax・税理士に頼む境界【2026】
【重要】本記事は2026年6月時点の一般的な整理です。税率・控除額・申告様式は法改正で変わることがあり、特に2026年創設の防衛特別法人税は適用開始時期や税率・控除額が動く可能性があります。具体的な税額計算と個別の判断は、必ず最新の国税庁の情報と税理士の助言に基づいて行ってください。
法人決算と申告の全体像
会社を作って1年目の決算が近づくと、多くの一人社長が「税理士に頼まず自分でできないか」と考えます。顧問契約は年20〜50万円ほどかかるため、自分でやれれば固定費を大きく下げられるからです。取引がシンプルな会社なら、クラウドの申告ソフトを使って自力で申告することは十分に可能です。ただし法人の申告は個人の確定申告より書類が多く、間違えたときの影響も大きいので、「やれるか」だけでなく「自分でやるべきか」を見極めることが大切です。
法人税の申告は、大きく3つの段階に分かれます。
- 決算:1年間の取引を締めて、決算書(貸借対照表・損益計算書など)を作る
- 申告:決算書をもとに法人税・地方税・消費税の申告書を作り、税務署と自治体へ提出する
- 納付:確定した税額を期限までに納める
最初の関門は期限です。法人税・地方法人税・法人事業税・消費税の申告と納付は、原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内に行います。3月決算なら5月末、12月決算なら2月末が目安です。個人の確定申告のように「毎年3月15日」と決まっているわけではなく、自社の決算月で期限が変わる点に注意してください。月次でこまめに記帳しておくほど、この2か月の負担は軽くなります。
申告に必要な書類
法人税の申告では、個人事業より多くの書類を提出します。主なものは次のとおりです。
- 法人税申告書(別表一〜。会社の状況に応じて使う別表が変わります)
- 決算書(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書など)
- 勘定科目内訳明細書(売掛金・買掛金・預貯金などの内訳)
- 法人事業概況説明書(事業内容や月別売上などをまとめた書類)
- 地方税の申告書(法人都道府県民税・事業税、法人市町村民税)
「別表」という言葉で身構える人が多いのですが、別表は会計上の利益を税務上の所得に調整するための計算用紙です。交際費の一部など、会計と税務でズレる項目を加算・減算して、最終的な課税所得を出します。申告ソフトを使うと、決算書の数字から必要な別表をかなり自動で埋めてくれます。
地方税の申告も忘れがちです。法人住民税には「均等割」があり、赤字でも、さらに事業をほとんど動かしていなくても(休眠でない限り)かかります。資本金1,000万円以下・従業員50人以下の会社で最低7万円前後が目安ですが、税率は自治体によって変わるため、お住まいの都道府県・市区町村で確認してください。「利益が出ていないから税金はゼロ」とはならない点を、最初に押さえておきましょう。
自分で申告する手順 5ステップ
ステップ1|帳簿を締めて決算整理を行う
期末日時点で、売掛金・買掛金・在庫・固定資産の減価償却・前払/未払などを正しく計上します。ここがずれると以降のすべての数字がずれます。月次で記帳できていれば、年度末の作業は確認と調整が中心になります(この月次記帳の有無が、自分でやれるかどうかの分かれ目です)。
ステップ2|決算書を作成する
整理した帳簿から、貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書を作ります。クラウド会計ソフトに日々の取引を入力していれば、決算書はほぼ自動で生成されます。
ステップ3|申告書(別表)を作成する
決算書をもとに、別表を含む法人税申告書、地方税申告書、(課税事業者なら)消費税申告書を作ります。消費税は本則・簡易・2割特例で税額が変わるため、どの方式が有利かを事前に把握しておくと安心です。決算前のうちに 消費税の納税額シミュレーター で各方式を比べておくと、申告時に迷いません。
ステップ4|e-Taxで電子申告する
申告書ができたら、e-Tax(国税)とeLTAX(地方税)で電子申告します。e-Taxの利用には、利用者識別番号と電子証明書(マイナンバーカードや法人の電子証明書)が必要で、取得に数日かかることがあります。期限直前に準備を始めると間に合わないことがあるため、早めに用意してください。添付書類はPDFのイメージデータで提出できます。電子申告が難しい場合は、書面を税務署・自治体に持参または郵送する方法もあります。
ステップ5|税額を納付する
確定した法人税・地方税・消費税を、申告期限と同じ「事業年度末から2か月以内」に納付します。e-Taxのダイレクト納付やインターネットバンキング、クレジットカード納付などが使えます。黒字でも資金繰りで納税できないと延滞税がかかるため、納税資金は決算前から確保しておきましょう。
申告期限の延長特例
3月決算で株主総会が6月という会社のように、決算から2か月以内に申告までたどり着けないケースがあります。定款で「株主総会は事業年度末から3か月以内」と定めているなどの条件を満たせば、あらかじめ申請することで法人税の申告期限を1か月延長できます(延長の特例)。
ただし注意点があります。延長できるのは申告期限だけで、納付期限は延びません。延長期間に対応する分は利子税がかかるため、見込みで先に納付しておくのが一般的です。自分でやる場合も、当てはまるなら早めに延長の申請を済ませておくと、決算作業に余裕が生まれます。
2026年に押さえておきたい変更点
防衛特別法人税の創設
2026年(令和8年)4月1日以後に開始する事業年度から、防衛特別法人税が新たに課されます。これは法人税額(基準法人税額)に上乗せされる国税で、一定の基礎控除額を超える部分に税率がかかる仕組みです。基礎控除が設けられているため、規模の小さい中小企業では実質的な負担が生じないケースも多いとされますが、申告書の様式や計算項目は変わります。自分で申告するなら、最新の申告ソフトと最新様式を使うことが前提です。税率や控除額の詳細は、申告時点で必ず国税庁の最新情報を確認してください。
電子申告が義務なのは大法人だけ
「法人は電子申告が義務」と誤解されがちですが、電子申告が義務化されているのは資本金が1億円を超える大法人などです。中小企業や一人社長の会社は任意で、書面提出も認められています。とはいえe-Taxは控えの保存や再提出がしやすく、自分でやるなら電子申告に慣れておく価値はあります。
消費税の申告も同じ期限
インボイス制度を機に課税事業者になった会社は、法人税と同じ「事業年度末から2か月以内」に消費税の申告・納付も必要です。 適格請求書発行事業者の登録判断 や2割特例の適用で納税額が変わるので、決算前に試算しておきましょう。
申告ソフトを使えば、自分でも進めやすい
法人の申告を自分でやるなら、現実的な選択肢はクラウド会計ソフトの申告機能です。日々の記帳から決算書、法人税の別表作成までを一つの流れでこなせます。代表的なのは freee、マネーフォワード クラウド、弥生で、いずれも決算・申告に対応したプランがあります。無料で使える申告ソフトもありますが、記帳との連携や入力補助を重視するなら、会計ソフトと申告がつながっている製品のほうが迷いにくいです。
どの会計ソフトが自社に合うかは、料金プラン・銀行連携・サポート体制で変わります。主要ソフトの違いは クラウド会計ソフト比較 2026 にまとめているので、申告まで見据えて選びたい方はあわせてご覧ください。
「自分でやる」と「税理士に頼む」の境界線
自分で申告しやすいのは、次のような会社です。
- 取引がシンプルで、仕訳の種類が少ない
- 売上規模が小さく、特殊な税務処理がない
- 月次で記帳できていて、決算書がすぐ出せる
逆に、次のようなケースは税理士に頼むほうが安全です。
- 売上が伸びて、消費税や税額控除の判断が複雑になってきた
- 役員報酬・退職金・固定資産など、判断を間違えると影響が大きい論点がある
- 本業が忙しく、決算・申告に時間を割けない
最近は、毎月の顧問契約ではなく「決算・申告だけ」「記帳は自社、申告だけ依頼」といった切り出し方ができる税理士サブスク・スポット依頼のサービスが増えています。全部自分かフル顧問かの二択ではなく、自社の状況に合わせて頼む範囲を決めれば十分です。頼む範囲別の選び方や料金は 税理士サブスク・経理代行の比較 で整理しています。
よくある失敗とペナルティ
- 期限後申告:2か月の期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税の対象になります。期限内申告が最優先です。
- 地方税の出し忘れ:法人税(国税)だけ出して、都道府県・市町村の申告を忘れるミスが起きがちです。国税と地方税はセットで考えましょう。
- e-Taxの準備不足:利用者識別番号や電子証明書の取得が間に合わず、期限直前に詰まるケースです。早めの準備で防げます。
- 様式の古さ:2026年は防衛特別法人税の創設など様式変更があります。古いソフト・古い様式のまま作らないこと。
まとめ
法人決算と法人税申告は、取引がシンプルな会社なら、クラウドの申告ソフトを使って自分で進められます。守るべきは「事業年度末から2か月以内」という期限で、法人税・地方税・消費税はセットで考え、2026年は防衛特別法人税に対応した最新様式のソフトを使うこと。そのうえで判断が複雑になってきたら、決算・申告だけでも専門家に頼めば無理がありません。まずは自社の決算月から逆算して、いつ何を出すのかをカレンダーに落とすところから始めましょう。
