令和8年分の年末調整|会社がやること・変更点と締切逆算【2026年12月】
Editorial / インボイス・税務

令和8年分の年末調整|会社がやること・変更点と締切逆算【2026年12月】

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2024年の定額減税で、年末に給与計算がぐちゃぐちゃになった記憶はまだ新しいと思います。「毎月ちょっとずつ引いて、年末で調整して、月次の給与明細に減税額を書いて……」。あの特殊処理を、片手間の総務が汗をかきながら回した会社は多いはずです。

令和8年分(2026年12月に行う)の年末調整を前に、また身構えている人がいるかもしれません。先に結論を言うと、定額減税のような一回限りの特殊処理は令和8年にはありません。定額減税は令和6年分で終わっています。

ただし、令和8年分の年末調整には別の落とし穴があります。基礎控除や扶養の枠が令和7年から大きく変わり、令和8年はその2年目にあたります。毎月の給与計算(源泉徴収)にはすでに改正が反映されているのに、一部だけは月次に載らず、12月の年末調整でまとめて精算します。この「月次に載る分・載らない分」の切り分けを知らないと、従業員から「先月と手取りが同じなのに、なぜ年末で還付が出るの?」と聞かれて答えに詰まります。

狙いは制度の網羅ではありません。従業員がいる小さな会社で、社長や兼任の総務が年末調整を回す前提で、令和8年分は何を・いつ・どの順でやるかを締切から逆算します。変更点も、会社の実務に効く3点に絞ります。従業員がおらず、1人社長が自分の役員報酬の年末調整だけを回す場合は、1人法人の年末調整 完全ガイドのほうが手順に沿っています。この記事は従業員の年末調整と令和8年の変更点に絞ります。

【重要】 本記事は2026年7月時点の法令・国税庁公開情報に基づき、一般的な考え方を整理したものです。控除額・所得要件・様式は年分で変わり、個々の事情でも扱いが変わります。実際の処理・配布の前に、国税庁の令和8年分の最新様式と一次情報、または顧問税理士にご確認ください。

令和8年分の年末調整、会社に効くのは3点だけ

制度の全体像を追い出すときりがありません。従業員がいる小さな会社が押さえるべきは、実務に効く次の3点です。

  1. 基礎控除・給与所得控除が引き上がった状態の2年目。令和7年から基礎控除は所得に応じて最大95万円(改正前は一律48万円)、給与所得控除の最低保障は65万円(改正前55万円)に上がっています。令和8年もこの水準が続きます。
  2. 扶養に入れる収入ラインが123万円に上がっている。扶養親族と認められる合計所得の要件が48万円から58万円へ、給与収入でいえば103万円から123万円に緩和されました。パート・アルバイトの家族を扶養に入れられる範囲が広がっており、従業員からの申告内容が去年と変わる可能性があります。
  3. 19歳以上23歳未満の子がいる家庭向けに「特定親族特別控除」ができた。大学生年代の子がアルバイトで稼いでも、一定額までは親の控除が段階的に残る新しい控除です。控除額は最大63万円。これは月次の給与計算に十分に反映されず、年末調整で精算する部分が出ます。

このうち3番、そして基礎控除の「上乗せ部分」が、月次に載らず年末で精算されます。この切り分けが、令和8年の年末調整で一番つまずくところです。

令和8年の年末調整の正しい構図|月次は改正済み、年末で精算するのは「載らない部分」だけ

ここが令和8年分の年末調整で一番誤解されるポイントです。令和8年(2026年)は、1月支払いの給与から改正を織り込んだ「令和8年分 源泉徴収税額表」を使っています。毎月の給与計算には、基礎控除・給与所得控除の引き上げがすでに反映済みです。だから令和8年の年末調整で新たに精算するのは、月次の税額表に織り込みきれない次の2つに絞られます。

  • 基礎控除の「特例加算」部分。基礎控除は本則58万円に、所得に応じた上乗せ(合計所得132万円以下なら+37万円で95万円など)が乗っています。月次の税額表は本則ベースで組まれており、この上乗せは年末調整または確定申告でしか反映されません。
  • 特定親族特別控除の逓減部分。子の所得が増えるにつれ控除額が段階的に減る計算は、毎月の給与計算では扱いきれず、年末調整で最終確定します。

対比で見ると分かりやすいです。令和7年(2025年)は法改正が年の途中に決まったため、毎月の給与は改正前の税額表(基礎控除48万円)のまま源泉徴収し、12月の年末調整で一括精算しました。これが「月次は据え置き・年末でまとめて精算」の大きなねじれです。令和8年に残るねじれは、上の2つに限られた部分的なものにすぎません。従業員に「毎月の手取りは去年並みなのに年末で少し還付が出る」理由を聞かれたら、「月々の計算に乗せきれない控除の上乗せ分を、年末でまとめて精算しているから」と答えればいいです。

変更点の中身|基礎控除・扶養123万・特定親族特別控除

数字は年分で変わるので、令和8年分(2026年)の水準で押さえます。

項目改正前令和7・8年分会社実務への影響
基礎控除一律48万円所得に応じ58〜95万円
(132万円以下=95万円)
上乗せ分は年末調整で精算
給与所得控除の最低保障55万円65万円月次税額表に反映済み
扶養親族の所得要件合計所得48万円
(給与収入103万円)
合計所得58万円
(給与収入123万円)
扶養に入れる家族の範囲が拡大。申告内容の変化に注意
特定親族特別控除(新設)なし19歳以上23歳未満・子の合計所得58万円超123万円以下(給与150万円超188万円以下)で最大63万円新しい申告書欄。逓減部分は年末調整で精算

※特定親族特別控除の満額63万円は子の給与収入150万円まで。これを超えると188万円まで段階的に逓減します。

会社が特に気にすべきは、扶養の123万円ラインです。従業員の配偶者や子がパートで働いている場合、去年は扶養から外れていた人が、令和8年は扶養に入れられるケースがあります。逆に従業員が古い103万円の感覚で申告してくると、扶養の付け漏れが起きます。年末調整の書類回収時に「収入のラインが123万円に変わっている」と一言添えるだけで、この取りこぼしは防げます。

締切逆算カレンダー(10月〜翌1月)

年末調整は12月に始めると間に合いません。10月から逆算して並べます。

時期会社がやること
10月国税庁の令和8年分の確定様式を入手・印刷(または年調ソフトの設定確認)。従業員へ年末調整の予告と、扶養123万ラインの変更を周知
11月上旬各種申告書と控除証明書(保険料・iDeCo・住宅ローン等)の回収を依頼。提出期限を社内で設定(11月末目安)
11月下旬回収書類の点検。扶養の所得判定・特定親族の該当確認・記入漏れの差し戻し
12月年税額の計算・過不足の精算(12月給与または翌1月給与で還付・追徴)。源泉徴収票の作成
翌1月末源泉徴収票を従業員へ交付。税務署へ法定調書合計表・(該当あれば)支払調書、市区町村へ給与支払報告書を提出(いずれも1月31日期限)

書類が集まらないと計算に進めません。ボトルネックは毎年「回収」です。ここを早く締めるほど12月が楽になります。手計算で年税額を出すのが不安なら、この段階で年末調整に対応した給与計算ソフトを使うか、顧問税理士に渡す判断をしておくと、12月の追い込みで詰まりません。

従業員への案内・書類回収(コピペできる案内文つき)

小さな会社の年末調整でいちばん時間を食うのは、従業員への説明と書類の回収です。令和8年は扶養123万ラインの変更もあるので、案内文に一言入れておきます。以下はそのままコピペして社内に流せる雛形です。

【年末調整の書類提出のお願い】

お疲れさまです。令和8年分の年末調整を行います。下記の書類を◯月◯日(◯)までに提出してください。

  • 扶養控除等(異動)申告書
  • 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  • 保険料控除申告書 + 各種控除証明書(生命保険・地震保険・iDeCo・小規模企業共済等)の原本
  • (該当者)住宅ローン控除の証明書類

今年からの主な変更点:

  • 扶養に入れられる家族の収入ラインが、給与収入103万円から123万円に上がっています。ご家族の働き方によっては、去年は対象外だった方が今年は扶養に入れる場合があります。
  • 19歳以上23歳未満のお子さんがいる方は、お子さんのアルバイト収入が一定額まで、新しい控除(特定親族特別控除)の対象になる場合があります。

ご不明な点は◯◯まで。期限を過ぎると年末調整に間に合わず、ご自身での確定申告が必要になる場合があります。

書類名は令和8年分の様式に合わせています。国税庁は令和8年分の様式を公表しているので、配布前に最新の確定様式で名称・記載欄を確認してください(様式は毎年微修正が入ります)。

この記事の実務セット(無料ダウンロード)

社内利用・編集は自由です。ブログ等でご紹介いただく際は本記事へのリンクをお願いします。

よくある失敗|設立2年・従業員4名の会社の場合

一般論の失敗リストより、具体的な会社で見たほうが早いです。設立2年、社長+正社員2名+掛け持ちパート1名の会社を例にします。

  • 掛け持ちパートの申告書が2社に出ている。パートのAさんが本業と当社の両方に扶養控除等申告書を出していました。年末調整できるのは1社(主たる給与)だけ。当社が従たる給与なら年末調整せず、Aさんは自分で確定申告します。ここを取り違えると二重に控除してしまいます。
  • 扶養を103万円の古い感覚で申告。社員Bさんが配偶者の収入を「103万円を超えたから扶養は無理」と自己判断し、申告書に書きませんでした。実際は123万円ラインなので扶養に入れられます。回収時のひと声で防げた取りこぼしです。
  • 子のアルバイト収入を確認しないまま特定親族特別控除を満額計上。大学生の子がいる社員Cさん。子の収入次第で控除が逓減するのに、満額63万円で処理して後から差し戻し。控除証明ではなく本人申告なので、記入時の確認が要ります。
  • 年の途中入社の前職分を合算し忘れる。中途入社のDさんの前職の源泉徴収票を回収せず、当社分だけで年末調整してしまう。前職分を合算しないと年税額が狂います。
  • 年の途中で辞めた人まで年末調整しようとする。11月に退職したEさん。原則として年の途中で退職した人の年末調整は会社では行わず、本人が確定申告します(死亡退職など一部例外を除く)。人の出入りが多い小さな会社ほど、ここの線引きで迷います。

どれも「回収時のひと確認」で防げるものばかりです。点検リストを用意して、回収→点検→差し戻しの流れを作っておきます。

令和9年からは基礎控除の上乗せが縮む|今から意識したい「出口」

もう一つ、令和8年だからこそ触れておきたい点があります。基礎控除の上乗せ(所得132万円以下で95万円などの特例加算)は、令和7年分・8年分に限った措置です。令和9年分以後は、132万円超655万円以下の区分が原則58万円に戻り、上乗せは縮小します。

つまり令和8年は、基礎控除がいちばん厚い最後の年になります。従業員向けの説明ではそこまで踏み込む必要はありませんが、会社として翌年の手取り・源泉徴収額の変化を頭の片隅に置いておくと、令和9年の給与計算で慌てません。制度は毎年動く前提で、年分ラベルを外さずに数字を扱うのが安全です。

手計算は現実的か|ソフト・税理士・電子化の使いどころ

従業員数名なら手計算でも回ります。ただ令和8年は、基礎控除の所得区分・特定親族特別控除の逓減と、判定が細かくなっています。手作業だと点検に時間がかかり、ミスも出やすいです。

現実的な選択肢は3つです。

  • 年末調整対応の給与計算ソフト。従業員が控除証明書をスマホから電子データで提出でき、控除額の計算と源泉徴収票の作成まで自動化できます。紙で回すか、ソフトで従業員に入力させるかは、小さな会社ほど毎年悩むところです。年末調整は会計・給与ソフトを入れ替える動機になりやすいです。→ 会計ソフト比較
  • 顧問税理士に渡す。書類回収は自社、計算以降は税理士、という分担が小さな会社では現実的です。スポットや月額の税理士サブスクなら、年末調整の時期だけ頼る使い方もできます。
  • 国税庁の年調ソフト。控除証明書の電子データ(マイナポータル連携)を取り込める無料ツールです。ソフト導入まで踏み切れない会社の入口になります。

どれを選ぶにせよ、10月のカレンダーの段階で決めておきます。源泉徴収税額シミュレーター給与計算シミュレーターで毎月の源泉と年末の精算のイメージをつかんでおくと、12月に「やっぱり手計算は無理」と気づいて間に合わない事態を避けられます。

回収は自社でやり、計算から先だけ専門家に切り出す分担も、従業員がいる小さな会社では現実的です。年末調整だけスポットで頼みたい、あるいは決算まで含めて相談したいなら、税理士マッチングで自社に合う相手を無料で探せます。

よくある質問(FAQ)

Q. 令和8年分の年末調整は、令和7年と比べて何が違いますか?

制度の枠組みは同じ(2年目)です。大きく違うのは、令和7年は毎月の給与が改正前の税額で12月にまとめて精算したのに対し、令和8年は毎月の給与計算にすでに改正が反映されている点です。年末で精算するのは、月次に載らない基礎控除の上乗せ分と特定親族特別控除の逓減分に限られます。

Q. 扶養に入れられる収入のラインは103万円ですか、123万円ですか?

令和7年分から給与収入123万円(合計所得58万円)に上がっています。103万円は改正前の水準です。従業員が古い感覚で申告すると扶養の付け漏れが起きるので、年末調整の書類回収時に周知してください。

Q. 定額減税の処理は令和8年も必要ですか?

不要です。定額減税は令和6年分限りの措置で、すでに終了しています。令和8年の年末調整に定額減税は関係しません。

Q. 特定親族特別控除とは何ですか?

12月31日時点で19歳以上23歳未満の親族(子など)の合計所得が58万円超123万円以下(給与収入150万円超188万円以下)の場合に、最大63万円が受けられる新しい控除です。満額63万円は子の給与収入150万円まで、それを超えると188万円まで段階的に控除額が減ります。配偶者や事業専従者は対象外です。

Q. 令和8年分の申告書の様式はいつ確定しますか?

国税庁が令和8年分の様式を公表しています。名称や記載欄は毎年微修正が入るため、配布前に国税庁のページで最新の確定様式を確認してください。特に基礎控除申告書には特定親族特別控除の欄が、保険料控除申告書には23歳未満の扶養親族に関する記載が加わっています。

Q. 従業員数が少なければ手計算でも大丈夫ですか?

数名なら可能ですが、令和8年は基礎控除の所得区分や特定親族特別控除の逓減で判定が細かくなっています。点検の手間とミスのリスクを考えると、年末調整対応の給与計算ソフトや税理士への委託を10月の段階で検討しておくのが安全です。

まとめ:切り分けを知り、10月から逆算する

令和8年分の年末調整は、定額減税のような一回限りの特殊処理はありません。代わりに、基礎控除・給与所得控除・扶養123万・特定親族特別控除という改正の2年目を、正しく処理する年になります。会社が押さえるのは、月次にはもう反映済みで、年末で精算するのは特例加算と特定親族の逓減という「載らない部分」だけ、という切り分けです。

やることは10月から逆算すれば片手間でも回ります。回収を早く締め、扶養123万の変更を従業員に一言伝え、点検リストで差し戻しを潰す。この段取りで、12月の追い込みはかなり楽になります。手順の詳しい前提は源泉徴収の基本ガイド給与計算を自分でやる手順で確認できます。

参考資料・公的一次ソース