給与計算を自分でやる手順 2026|社保・源泉・手取りまで
【重要】 本記事は2026年6月時点の法令・料率に基づく一般的な情報を整理したものです。料率や個別の判断は変更・例外があり得るため、最新の保険料額表・源泉徴収税額表を確認し、個別の判断は社会保険労務士または税理士にご相談ください。
1. 給与計算の全体像|引く順番が決まっている
給与計算は、決まった順番で控除を積み上げていく作業です。順番を間違えると金額がずれるので、まず流れを頭に入れます。
計算は次の順で進みます。
①総支給額(基本給+各種手当)を確定する → ②社会保険料(健康保険・厚生年金・40歳以上は介護保険)を引く → ③雇用保険料を引く → ④源泉所得税を引く → ⑤住民税を引く → 残った金額が⑥手取り(差引支給額)です。
ここで注意したいのが労災保険です。労災保険料は全額が会社負担で、従業員の給与からは天引きしません。社会保険や雇用保険のように本人負担分を引く処理は不要です。
社会保険(健康保険・厚生年金・介護保険)と雇用保険は、本人と会社で負担を分け合います。源泉所得税と住民税は本人負担を給与から預かり、会社が代わりに国・市区町村へ納めます。
2. 社会保険料の計算|健康保険|厚生年金|介護保険
社会保険料は、給与そのものではなく「標準報酬月額」という区分にあてはめた金額に料率を掛けて計算します。毎月の給与を等級表で区切った金額が標準報酬月額です。実際の運用では、協会けんぽが都道府県別に出している保険料額表を見て、等級ごとの金額をそのまま使うのが確実です。
健康保険
協会けんぽの健康保険料率は、令和8年4月納付分から全国平均で9.90%へ引き下げられます(令和7年度の10.00%から引下げ)。料率は都道府県別に決まるため、事業所のある都道府県の率を確認します。健康保険料は労使折半で、本人と会社が半分ずつ負担します。
厚生年金
厚生年金の保険料率は18.3%で固定されています。これも労使折半で、本人・会社それぞれ9.15%ずつの負担です。
介護保険(40歳以上)
40歳から64歳までの従業員(介護保険第2号被保険者)には、介護保険料が上乗せされます。令和8年度の介護保険料率は全国一律1.62%で、健康保険料に加算して労使折半します。40歳の誕生日の前日が属する月から徴収が始まる点が見落としやすいので、生年月日の管理が欠かせません。
あわせて、令和8年4月から「子ども・子育て支援金」が始まります。率は0.23%で、医療保険料(健康保険料)に上乗せして徴収される仕組みです。本人と会社の負担配分については、ここで使う一次情報の範囲では確定的に書けないため、施行時点の保険料額表で確認してください。
| 項目 | 料率 | 負担 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ) | 全国平均9.90% | 労使折半 | 令和8年4月納付分から。都道府県別に確定 |
| 厚生年金 | 18.3% | 労使折半(各9.15%) | 固定 |
| 介護保険(第2号・40歳以上) | 1.62% | 労使折半 | 全国一律。健保に上乗せ |
| 子ども・子育て支援金 | 0.23% | 保険料額表で確認 | 令和8年4月開始。医療保険料に上乗せ |
3. 雇用保険・源泉所得税・住民税の計算
社会保険のあとに、雇用保険料・源泉所得税・住民税を引いていきます。
③雇用保険料
雇用保険料は、社会保険と違って総支給額にそのまま料率を掛けて計算します。令和8年4月から令和9年3月までの一般の事業の料率は、労働者負担5/1000・事業主負担8.5/1000・合計13.5/1000です(前年の合計14.5/1000から引下げ)。建設の事業は合計16.5/1000と高めに設定されています。給与から引くのは労働者負担分だけです。
④源泉所得税
源泉所得税は「給与所得の源泉徴収税額表」を使って求めます。社会保険料と雇用保険料を引いたあとの金額と、扶養親族等の数から税額表で読み取ります。「扶養控除等申告書」を提出している人は甲欄、提出がない人(掛け持ち先など)は乙欄で、同じ給与額でも税額が変わります。
源泉徴収税額表は年度ごとに改正されることがあるため、令和8年分の給与計算では令和8年分の税額表を使います。なお、税額表の前提となる所得税の制度は近年動きが続いています。2025年(令和7年)から、扶養親族の所得が一定の範囲にある場合に適用する「特定親族特別控除」が新設されており、年末調整や源泉徴収の扶養判定に影響します。また、2027年(令和9年)からは「防衛特別所得税」の導入が予定されています。これらの所得税まわりの変更点の詳しい計算方法は本記事の範囲を超えるため、最新の税額表と国税庁の案内で確認してください。
役員や個人への報酬(原稿料・講演料など)の源泉徴収は、給与とは別の計算になります。報酬・料金の源泉徴収額は源泉徴収税額の計算ツールで確認できます。請求まわりの源泉の扱いはインボイス2026年10月の壁ガイドもあわせてご覧ください。
⑤住民税
住民税は、給与計算する側が金額を計算するものではありません。前年の所得をもとに市区町村が計算し、毎年5〜6月ごろに「特別徴収税額の決定通知書」で会社へ通知されます。会社はその通知額をそのまま6月分から翌年5月分の給与で12回に分けて天引きします。自分で税率を掛けて計算しないのがポイントです。
総支給からここまでの控除をすべて引いた残りが手取りです。各料率を当てはめた手取り・会社負担・月人件費は給与計算シミュレーターで一度に試算できます。
| 事業の種類 | 労働者負担 | 事業主負担 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 一般の事業 | 5/1000 | 8.5/1000 | 13.5/1000 |
| 建設の事業 | (個別に確認) | (個別に確認) | 16.5/1000 |
4. 会社負担まで含めた「月人件費」で考える
給与計算で本人の手取りを出すだけでは、会社の支出は把握できません。社会保険料と雇用保険料には会社負担分(法定福利費)があり、これを足したものが実際に会社が負担する月人件費です。
たとえば健康保険・厚生年金・介護保険は労使折半なので、本人が引かれる額とほぼ同額を会社も負担します。雇用保険も会社負担分(一般の事業で8.5/1000)が別にかかります。労災保険料は全額が会社負担です。労災保険率は業種別に2.5/1000〜88/1000の幅があり(令和7年度と同率)、建設や製造など業種によって大きく変わります。
このため、額面30万円の従業員を雇うと、会社の月人件費は額面の2割前後増えるのが一般的な目安です。採用の予算を組むときは、額面ではなく月人件費で試算します。額面・手取り・会社負担・月人件費の関係は給与計算シミュレーターに金額を入れると一度に出ます。初めて社員を雇うときの手続き全体ははじめての採用ガイドで時系列に確認できます。
| 項目 | 本人負担(天引き) | 会社負担 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金・介護保険 | あり(折半) | あり(折半) |
| 雇用保険 | あり(5/1000) | あり(8.5/1000) |
| 源泉所得税・住民税 | あり(預かって納付) | なし |
| 労災保険 | なし | 全額 |
5. 106万円の壁|撤廃の動きと2026年の論点
パートやアルバイトを雇うときに意識される「106万円の壁」が動いています。2025年6月に成立・公布された年金制度改正法で、短時間労働者の社会保険加入要件のうち「月額賃金8.8万円以上(年収約106万円)」という賃金要件を撤廃することが決まりました。
賃金要件の撤廃後は、加入の主な判断基準が「週の所定労働時間20時間以上」になります。残る要件は、週20時間以上・2か月を超えて雇用される見込み・学生でない・企業規模(現行は従業員51人以上)です。
施行日は政令で確定する事項で、政府想定として2026年10月が示されていますが、厚生労働省は施行の月日を断定していません。企業規模の要件についても、改正法附則で段階的に撤廃していくことが予定されています。
小規模事業者では企業規模51人以上に届かないケースも多いものの、今後の段階的撤廃で対象が広がる見込みです。短時間労働者の社会保険適用拡大の全体像は社会保険の適用拡大ガイドで確認し、制度が固まり次第ソフトの設定を見直してください。
6. 自分でやるか、ソフト・税理士に任せるか
給与計算は、人数が少ないうちは手計算でも回せます。ただ、ミスが追徴課税や従業員との信頼問題に直結する作業でもあります。
よくあるミスは限られています。源泉所得税の甲欄・乙欄を取り違える。住民税を自分で計算してしまう(実際は市区町村の通知額をそのまま使う)。この2つが特に起きやすい間違いです。ほかにも、料率改定の反映漏れや、40歳到達月からの介護保険の徴収開始忘れが目立ちます。
料率は毎年のように変わります。2026年度も健康保険・雇用保険・子ども子育て支援金が動きます。手計算で続けると改定のたびに自分で更新する必要があり、抜けが出ます。
freee人事労務(勤怠から労務手続きまで一体型)やマネーフォワードクラウド給与(給与計算に特化)といったソフトを使うと、社会保険・雇用保険・源泉・住民税の自動計算から、給与明細の発行、振込ファイルの作成、年末調整まで対応できます。料率の改定もソフト側で更新されます。料率が確定したタイミングで設定を見直す手間が減ります。
人数が増えてきたり、役員報酬や年末調整の判断に不安があるなら、税理士や社会保険労務士への外注も選択肢です。自分で全体像を把握したうえでソフトや専門家に任せると、丸投げにならずチェックも効きます。
よくある質問(FAQ)
Q. 給与計算は何を引けば手取りになりますか?
総支給額から、社会保険料(健康保険・厚生年金・40歳以上は介護保険)、雇用保険料、源泉所得税、住民税を順に引いた残りが手取りです。労災保険料は会社が全額負担するため給与からは引きません。
Q. 2026年度の社会保険料率はどうなりますか?
厚生年金は18.3%で固定です。協会けんぽの健康保険料率は令和8年4月納付分から全国平均9.90%へ引き下げられ(都道府県別)、介護保険料率は全国一律1.62%です。あわせて令和8年4月から子ども・子育て支援金0.23%が医療保険料に上乗せされます。
Q. 雇用保険料率は2026年にいくらですか?
令和8年4月から令和9年3月までの一般の事業は、労働者負担5/1000・事業主負担8.5/1000・合計13.5/1000です。前年の合計14.5/1000から引き下げられています。建設の事業は合計16.5/1000です。
Q. 労災保険料は給与から引きますか?
引きません。労災保険料は全額が会社負担です。労災保険率は業種別に2.5/1000〜88/1000の幅があり、令和7年度と同率です。給与から天引きするのは社会保険・雇用保険・源泉所得税・住民税です。
Q. 106万円の壁はいつ撤廃されますか?
2025年6月成立・公布の年金制度改正法で、短時間労働者の社会保険加入要件のうち月8.8万円(年収約106万円)の賃金要件の撤廃が決まりました。撤廃後の主な基準は週20時間以上です。施行日は政令で確定する事項で、政府想定として2026年10月が示されていますが、月日は断定されていません。
Q. 給与計算ソフトと税理士はどう使い分けますか?
freee人事労務やマネーフォワードクラウド給与は、社保・雇用保険・源泉・住民税の自動計算や年末調整に対応し、料率改定も自動で反映されます。人数が増えたり役員報酬・年末調整の判断に不安があれば、税理士や社労士への外注も検討します。
