源泉徴収のやり方 完全ガイド2026|報酬10.21%と給与の計算・改正点
【重要】本記事は2026年6月時点の法令に基づく一般的な情報を整理したものです。個別の源泉徴収税の計算、報酬・給与の区分判定、年末調整の処理については、必ず税理士または管轄税務署にご相談ください。
1. 源泉徴収とは何か|仕組みを30秒で
源泉徴収は、給与や報酬を支払う人が、その支払額からあらかじめ所得税(と復興特別所得税)を天引きし、本人の代わりに国に納める制度です。支払う側が天引きして納付するのが特徴です。
天引きしたお金は、原則として支払った月の翌月10日までに納めます。たとえば6月に支払った報酬から天引きした分は、7月10日が納期限です。
天引きした金額はあくまで概算なので、年末に過不足を精算します。給与の場合はこれが年末調整です。報酬を受け取った個人事業主の場合は、確定申告で天引き済みの税額を精算します。源泉徴収は税金の前払いの仕組みだと考えるとわかりやすいです。
2. 2つの源泉徴収|給与と報酬は別物
源泉徴収には計算方法がまったく違う2系統があります。従業員に払う「給与等」と、外部の個人に払う「報酬・料金等(業務委託)」です。
給与は毎月の支給額と扶養親族の数から源泉徴収税額表を引いて天引き額を決め、年末調整で精算します。一方、報酬はその種類ごとに決まった率(原則10.21%)を掛けて計算し、精算は受け取った本人の確定申告で行います。
報酬の対象になるのは、原稿料|講演料|デザイン料といった創作系の支払いや、弁護士・税理士・司法書士などの士業への報酬です。誰に何を払うかで扱いが変わるので、まず「これは給与か報酬か」を区別するところから始めます。
給与の源泉徴収と報酬の源泉徴収の違い
| 項目 | 給与等 | 報酬・料金等(業務委託) |
|---|---|---|
| 支払う相手 | 雇用している従業員・役員 | 外部の個人(フリーランス・士業など) |
| 計算方法 | 源泉徴収税額表(甲欄・乙欄)で引く | 原則10.21%を掛ける |
| 精算のしかた | 支払者が年末調整で精算 | 受け取った本人が確定申告で精算 |
| 主な納期限 | 支払月の翌月10日(特例で年2回も可) | 支払月の翌月10日 |
3. 報酬の源泉徴収の計算|10.21%と100万円の壁
報酬の源泉徴収は、1回の支払額が100万円以下なら一律10.21%です。10%が所得税、0.21%が復興特別所得税にあたります。
100万円を超える部分は20.42%に上がります。式にすると、(支払金額 − 100万円)× 20.42% + 102,100円です。たとえば150万円の報酬なら、(1,500,000 − 1,000,000)× 20.42% + 102,100 = 204,200円が天引き額になります。
報酬の種類によっては控除があります。司法書士や土地家屋調査士などへの報酬は、1回の支払金額から1万円を差し引いた後に10.21%を掛けます。たとえば5万円なら、(50,000 − 10,000)× 10.21% = 4,084円です。
源泉徴収しなくてよい支払いもある
すべての外注費に源泉徴収が必要なわけではありません。システム開発やコンサルティング、物品の売買、運送の対価は源泉徴収の対象外です。請求書を見て「これは報酬の源泉対象か」を毎回確認します。
消費税の扱い
請求書で本体価格と消費税が分けて書かれている場合は、税抜の本体額に対して源泉徴収を計算して差し支えありません。税込金額にまとめて率を掛ける必要はないので、区分請求してもらうと天引き額を抑えられます。実際の天引き額を確かめたいときは、報酬の源泉徴収額を業種別に即計算すると手計算より早く済みます。
4. 給与の源泉徴収|源泉徴収税額表の見方
給与の天引き額は、自分で率を掛けて出すのではなく、国税庁が公表する源泉徴収税額表を引いて決めます。令和8年(2026年)1月1日以後に支払う給与からは「令和8年分 源泉徴収税額表」を使います。
表には甲欄と乙欄があります。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している従業員には甲欄、提出がない人(掛け持ちの2か所目など)には乙欄を適用します。乙欄は税率が高めに設定されています。
甲欄を引くときは、社会保険料を差し引いた後の給与額と、扶養親族等の数の2つで天引き額が決まります。給与から先に引かれるのは健康保険|厚生年金|雇用保険の保険料で、その残額が表を引く基準額です。扶養親族等の数の数え方は次のセクションで詳しく整理します。
給与計算は保険料・住民税・所得税が絡んで手作業だと間違えやすい部分です。月々の手取りや天引き額の目安を確かめたいときは、給与計算シミュレーターで月々の天引きを試算できます。
給与の源泉徴収税額表 甲欄と乙欄の違い
| 区分 | 適用される人 | 扶養控除等申告書 | 税率の傾向 |
|---|---|---|---|
| 甲欄 | 主たる給与の支払先(本業) | 提出あり | 扶養親族等の数に応じて軽くなる |
| 乙欄 | 従たる給与(2か所目以降) | 提出なし | 甲欄より高め |
5. 令和8年(2026年)改正の要点|効くのは年末調整から
ここが本記事の核心です。2026年は所得税の改正が重なる年ですが、月々の天引きが年の途中で急に変わるわけではありません。整理して押さえます。
国税庁の改正では、月々の源泉徴収に使う税額表は令和8年1月1日以後に支払う給与から「令和8年分」に切り替わります。ただし令和8年11月までの源泉徴収事務に大きな変更はありません。1年分の精算は令和8年12月の年末調整で、改正後の基礎控除や給与所得控除に基づいて行います。つまり改正の効果がまとまって現れるのは、月々の天引きではなく年末調整のタイミングです。
基礎控除の引き上げは「低所得帯ほど手厚い」
改正前の基礎控除は一律58万円でした。改正後は合計所得に応じた段階的な金額になります。注意したいのは、金額が大きいのは高所得者ではなく低所得者側だという点です。たとえば給与収入206万円以下の人は実質104万円まで控除が広がる一方、合計所得655万円超〜2,350万円以下の層は62万円にとどまります。合計所得2,350万円超は58万円のままで改正がありません。
さらに租税特別措置法による上乗せがありますが、これは令和8年分・令和9年分に限った時限的な措置です。恒久的に続くものではない点に注意してください。低所得帯の正確な金額は所得区分が細かいので、自分の数字は国税庁のPDFで確認するのが確実です。
令和8年改正の主な項目と適用時期
| 項目 | 改正前 | 改正後 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 基礎控除 | 一律58万円 | 合計所得に応じ段階的(例: 合計所得655万円超〜2,350万円以下=62万円) | 低所得帯ほど手厚い。2,350万円超は改正なし |
| 給与所得控除の最低保障 | 65万円 | 74万円(給与収入190万円以下) | 給与収入220万円超は改正なし |
| 税額表の切替 | 令和7年分 | 令和8年分(1月1日以後の支払から) | 月々の精算実感は12月の年末調整から |
| 特定親族特別控除 | なし | 最大63万円(令和7年分から創設) | 2026年からではなく2025年分から |
6. 源泉控除対象親族と特定親族|令和8年からの様式変更
令和8年分以後、扶養控除等申告書の様式が変わります。これまでの「控除対象扶養親族」という欄が「源泉控除対象親族」に置き換わります。名前が似ていますが、月々の源泉計算で数える範囲が変わるので順を追って整理します。
源泉控除対象親族の定義
源泉控除対象親族とは、次のどちらかに当てはまる親族です。
- 控除対象扶養親族(従来の扶養親族)
- 19歳以上23歳未満で、合計所得が58万円超100万円以下(給与収入で約165万円以下)の親族
特定親族特別控除との関係(123万と100万の違い)
ここで2つの数字が出てきて混乱しやすいので、分けて説明します。
特定親族特別控除(令和7年分から創設)の対象は、19歳以上23歳未満で合計所得58万円超123万円以下(給与収入で約123万〜188万)の親族です。この区分の親族を「特定親族」と呼びます。年末調整や確定申告では、この特定親族について最大63万円の控除を所得に応じてスライドさせて受けられます。
一方、毎月の給与から天引きする源泉計算で頭数に入るのは、特定親族のうち合計所得が100万円以下(給与収入で約165万円以下)の部分だけです。123万円までが年末の控除対象、100万円以下が月次の頭数対象、と主語が違います。所得が100万円超123万円以下の特定親族は、月々の天引きでは数えませんが、年末調整で控除を受けられる、という関係です。
扶養親族等の数の数え方
令和8年分以後、甲欄で使う「扶養親族等の数」は次の要素を足して算定します。配偶者の有無や障害の状況で頭数が変わるので、表で確認してください。
扶養親族等の数の算定要素(令和8年分以後)
| 要素 | 主な要件 | 数え方 |
|---|---|---|
| 源泉控除対象配偶者 | 所得者の合計所得900万円以下 かつ 配偶者の合計所得95万円以下 | 1人として数える |
| 源泉控除対象親族 | 控除対象扶養親族、または19歳以上23歳未満で合計所得58万円超100万円以下 | 該当する人数を数える |
| 障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生 | 障害者|寡婦|ひとり親|勤労学生のいずれかに該当 | 該当ごとに1人を加算(従来どおり) |
7. 源泉徴収義務者になる条件と納期の特例
人を雇って給与を払ったり、士業などに報酬を払ったりすると、その支払者は源泉徴収義務者になります。会社か個人事業かは問いません。
天引きした税金は原則として翌月10日までに納めます。ただし給与の支払人数が常時10人未満の事業者は、税務署に申請すれば納付を年2回にまとめられます。これが納期の特例です。1〜6月分を7月10日まで、7〜12月分を翌年1月20日までに納めます。
この特例を使えば、毎月12回あった納付手続きが年2回で済みます。雇用を始めたら、源泉徴収義務者の届出と合わせて申請を検討してください。改正後の精算手順は 年末調整の基本と2026年改正の手順 もあわせて確認してください。
