マイナ保険証 会社の対応 2026|8月までにやる3つと資格確認書【テンプレ付】
8月1日を過ぎると、期限切れの健康保険証は使えなくなります。マイナ保険証も資格確認書も持たない従業員が病院の窓口に出せば、その場では医療費を全額立て替えなければなりません。そして真っ先に問い合わせが来るのは、人事労務の担当者であるあなたです。
マイナ保険証の利用率は、全国で見ると月によって5〜6割を行き来しています。直近の2026年2月は約50%。自社の従業員の半数がそうだという意味ではありませんが、「未登録の人がいて当たり前」という前提で動くべき水準です。残り1か月、会社として誰に・何を・どの順番で声をかけるか。本人ではなく「雇う側」の動きだけに絞って、今月からの手順に落とします。
先に一つだけ誤解を解いておきます。資格確認書は、会社が従業員の代わりに申請して配るものではありません(協会けんぽの既存加入者の場合)。会社の仕事は申請代行ではなく、マイナ保険証も資格確認書も持っていない人を取りこぼさないことです。この一点を押さえれば、やるべきことはぐっと減ります。
【重要】 本記事は2026年6月時点の法令・厚生労働省・全国健康保険協会の公開情報に基づき、一般的な対応の考え方を整理したものです。暫定措置の期限・資格確認書の交付手続き・様式は変更されることがあるため、対応前に厚生労働省・加入する健康保険(協会けんぽ/健康保険組合)の最新情報を確認してください。自社の実態に合わせた個別判断は社会保険労務士にご相談を。
【今月の逆算カレンダー】8月1日までに会社がやること
残り時間は約4週間。優先順位をつけて、上から順に潰していきます。制度の細かい背景はこの記事の後半にまとめたので、まず手を動かしたい人はここから読んでください。QuickAnswerで挙げた3つは、そのまま週ごとのタスクに対応します。
第0週(最初に1回だけ):自社の保険の加入先を確認する
手順に入る前に、自社がどの保険に入っているかを確認してください。協会けんぽ(全国健康保険協会)か、健康保険組合かで、資格確認書の届き方が変わります。
- 協会けんぽ:資格確認書は対象の従業員本人の自宅へ直接届きます。会社の申請は原則不要。
- 健康保険組合:交付の流れは組合によって異なり、事業主を経由して配るケースが多くあります。自社の組合からの案内に従ってください。以下の手順は協会けんぽを前提に書いています。
第1週:従業員のマイナ保険証「登録状況」を把握する
最初にやるのは、自社の従業員が次の3グループのどれに当てはまるかの仕分けです。
| グループ | 状態 | 8月以降の受診 |
|---|---|---|
| A | マイナ保険証を登録済み | マイナ保険証でOK |
| B | 未登録だが資格確認書が手元にある | 資格確認書でOK |
| C | どちらも持っていない/手元にない・見当たらない | 要対応 |
把握といっても、全員に個別ヒアリングをする必要はありません。「マイナンバーカードを健康保険証として登録しているか」「協会けんぽから届いた資格確認書が手元にあるか」の2点を、朝礼やチャット、給与明細への一筆で一斉に確認すれば十分です。狙いはグループCを見つけ出すことだけです。
ここで注意したいのは、グループBの資格確認書は多くの人が2025年の秋(7月下旬〜10月下旬)にすでに受け取っている点です。つまり「これから届く」のではなく「去年届いたものが手元にあるか」を確認する段階に入っています。「もらった記憶はあるが見当たらない」という人は、実質的にグループCとして扱います。
第2週:未対応者(グループC)へ周知文を配る
グループCが見つかったら、何をすればいいかを具体的に伝えます。ここで「マイナ保険証に登録してください」とだけ言っても、高齢の従業員や非IT層は動けません。Cの人がとれる道は、次の2つのどちらかです。
- マイナンバーカードを持っている → 保険証としての利用登録をする(マイナポータル・医療機関の受付・セブン銀行ATMなど)。
- 資格確認書が見当たらない/届いていない → 再交付してもらう。協会けんぽの場合、被保険者本人または事業所から申請できます。早めに動けば8月1日に間に合います。
登録の手順と、登録しない場合の受け皿(資格確認書の再交付)の両方をセットで案内するのがコツです。そのまま使える文面は次の見出しに用意しました。
第3週以降:取りこぼしのフォローと例外ケースの洗い出し
最後に、周知しても反応がない人と、そもそも事情が特殊な人を拾います。海外駐在中の従業員、長期休職者、高齢の被扶養者、顔認証マイナンバーカードを使っている人といった例外は、後半の専用セクションで個別に扱います。
コピペで使える従業員向け案内文テンプレート
そのまま社内チャットやメール、掲示に使える文面です。会社名や問い合わせ先だけ自社用に差し替えてください。
【重要】健康保険証に関するお願い(2026年8月1日まで)
お疲れさまです。健康保険証についての大切なお知らせです。
2026年8月1日から、期限切れの健康保険証は医療機関で使えなくなります。病院・薬局を受診する際は、次のどちらかが必要です。
- マイナ保険証(マイナンバーカードを健康保険証として登録したもの)
- 資格確認書(マイナ保険証を使わない方に、申請なしで送られてくる書類。多くの方は2025年秋にご自宅へ届いています)
どちらも持たずに受診すると、窓口で医療費の全額をお支払いいただき、後日あらためて払い戻しの手続きが必要になります。次の点をご確認ください。
- マイナンバーカードをお持ちの方:まだ保険証利用の登録をしていなければ、マイナポータル・医療機関の受付・セブン銀行ATMなどで登録できます。
- マイナンバーカードをお持ちでない方:ご自宅に届いた「資格確認書」を保険証の代わりに使えます。手元に見当たらない場合は再交付できますので、〇月〇日までに〔担当者名〕までお知らせください。
ご不明な点は〔担当部署・連絡先〕までお問い合わせください。
ポイントは「登録できる人」と「登録しない・できない人」を分けて書き、後者にも必ず受け皿(資格確認書とその再交付)があると伝えることです。これで「自分は無保険になるのでは」という不安からの問い合わせを減らせます。
入退社・被扶養者の手続きはこう変わった(恒常業務)
8月1日対応とは別に、日常の社会保険手続きそのものも変わっています。ここは一度ルールを覚えれば回る恒常業務です。
新しく従業員を雇うとき
入社手続きで「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を出す流れは変わりません。ただし、従業員がマイナ保険証を使わない場合は、この資格取得届の「資格確認書発行要否」欄にチェックを入れると、資格確認書が会社経由で交付されます(おおむね2〜3週間で事業所に届きます)。新しい紙の保険証はもう発行されないので、「とりあえず保険証が来るのを待つ」という従来の感覚は通用しません。入社者本人がマイナ保険証を使うのか、資格確認書が必要なのかを、入社時に確認しておきます(→ 初めて従業員を雇うときの手続き)。
退職するとき
退職時に回収していた紙の保険証は、もう存在しません(資格確認書を持っている人からは回収が必要です)。退職後はマイナ保険証に紐づく資格情報が自動で切り替わるため、本人には「退職日の翌日からは当社の保険資格では受診できない」ことを伝えておきます。
被扶養者(家族)の手続き
扶養に入れる手続きの届出は従来どおりです。協会けんぽの場合、被扶養者の資格確認書も被保険者(従業員本人)宛にまとめて送られます。家族の分が届いているかも、本人に確認を促しておくと安心です。
特殊ケースの対応
定型から外れる従業員は、早めに個別フォローしておきます。
- 海外駐在員:日本の住所に資格確認書が届いても受け取れない可能性があります。送付先や受け取り方を本人と相談しておきます。
- 長期休職者:会社と連絡が取りづらく、案内が届かないことがあります。休職中でも保険資格は続くため、連絡手段を確保して周知します。
- 高齢の被扶養者:マイナ保険証の操作に不安がある家族は、資格確認書での受診が現実的です。「無理に登録しなくてよい」と伝えるだけで安心する人もいます。
- 顔認証マイナンバーカードを使っている人:暗証番号を設定していない顔認証タイプのカードは、マイナポータルやセブン銀行ATMでは保険証利用の登録ができません。市区町村の窓口か、医療機関のカードリーダーで登録します。
- 資格確認書が届いていない・不着:協会けんぽの既存加入者で、本人宛に送られたが宛所不明で戻った場合、事業所宛に再送されることがあります。会社に届いた資格確認書は速やかに本人へ渡します。
30秒でわかる前提整理:スケジュールと資格確認書の基礎
ここまでの手順の背景です。すでに対応を進めている人は読み飛ばして構いません。
移行スケジュールの全体像
| 時期 | 何が起きたか |
|---|---|
| 2024年12月2日 | 従来の健康保険証の新規発行を停止 |
| 2025年12月1日 | 発行済み保険証の有効期限が満了(経過措置1年の終了) |
| 2025年12月2日〜2026年7月31日 | 暫定措置。期限切れ保険証でも、医療機関がオンラインで資格を確認できれば受診できた |
| 2026年8月1日〜 | 期限切れ保険証は使用不可。マイナ保険証か資格確認書が必要 |
暫定措置はもともと2026年3月末までの予定でしたが、2026年3月19日の会見で上野厚生労働大臣が7月末までの延長を表明しました。医療現場の混乱回避とマイナ保険証の利用促進が理由です。同時に大臣は「これ以上の延長は考えていない」とも述べており、8月1日が事実上の最終ラインと見ておくのが安全です。
8月以降、保険証なしで受診するとどうなるか
マイナ保険証も資格確認書も持たずに受診すると、その場では医療費の全額(10割)を立て替えることになります。たとえば医療費が1万円かかる受診なら、窓口でいったん1万円を支払う形です。あとで「療養費」として申請すれば、本来の自己負担(多くの人は3割)を超えて払った分が払い戻され、先の例なら7,000円ほどが戻ります。ただし申請には領収書などの書類と窓口でのやりとりが必要で、振り込まれるまで数か月かかることもあります。申請できる期間は原則2年です。「立て替えればいい」と軽く考えず、8月までに受け皿を用意しておくほうが、従業員にとっても会社にとっても負担が軽く済みます。
資格確認書とは何か
マイナ保険証を持たない(利用登録をしていない)人が、保険証の代わりに医療機関へ提示する書類です。申請しなくても、対象者には保険者(協会けんぽや健康保険組合)から無償で交付されます。協会けんぽの場合、2025年4月30日の時点でマイナ保険証を持っていなかった既存の加入者へ、2025年7月下旬から10月下旬にかけて本人の自宅へ順次送付されました。だからこそ、いま会社が確認すべきは「届いているか・手元にあるか」であって、「新たに申請するか」ではないわけです。なお、この基準日より後に入社した従業員は自宅直送の対象ではなく、前述の資格取得届のチェック欄を通じて交付されます。
よくある質問(FAQ)
Q. 会社が従業員の資格確認書をまとめて申請する必要はありますか?
原則ありません。協会けんぽの既存加入者については、マイナ保険証を持たない対象者へ自動的(職権交付)に交付されており、会社の申請は不要です。会社のアクションが必要なのは、新しく入社する従業員の資格取得届で「資格確認書発行要否」を選ぶ場面や、従業員が資格確認書を失くして再交付するときなど、限られたケースです。
Q. 2026年8月以降に入社する従業員はどうなりますか?
入社時の「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」で、マイナ保険証を使うか資格確認書が必要かを確認します。資格確認書が必要なら届の「資格確認書発行要否」欄にチェックを入れ、会社経由で交付されます(おおむね2〜3週間で事業所に届きます)。
Q. マイナンバーカード自体を持っていない従業員は、無保険になりますか?
なりません。マイナンバーカードを持っていない人にも資格確認書が無償で交付されるため、それを医療機関に提示すれば従来どおり保険診療を受けられます。「カードを作らないと病院に行けない」というのは誤解です。
Q. 健康保険組合に加入している場合も対応は同じですか?
基本の考え方は同じですが、資格確認書の交付の流れは組合によって異なり、事業主を経由して配るケースが多くあります。協会けんぽは本人の自宅へ直接送付されるのに対し、健保組合は事業所経由が標準のことがあるため、自社が加入している組合からの案内を必ず確認してください。
Q. 8月以降にマイナ保険証も資格確認書もなく受診するとどうなりますか?
その場では医療費の全額(10割)を立て替えることになります。たとえば医療費が1万円なら窓口で1万円を支払う形です。後日「療養費」として申請すれば本来の自己負担(多くは3割)を超えて払った分(先の例で約7,000円)が払い戻されますが、領収書などの書類と申請が必要で、振り込まれるまで数か月かかることもあります。申請できる期間は原則2年です。
まとめ:今日やる1アクション
2026年8月1日で、期限切れの健康保険証は使えなくなります。会社がやることは多くありません。登録状況を把握し、未対応者に案内文を配り、例外ケースを個別にフォローする。資格確認書は会社が申請して配るものではないので、力を入れるべきは「マイナ保険証も資格確認書も持っていない従業員を見つけて、8月1日までに受け皿につなぐ」一点に集約されます。
今日できる最小の一歩は、来週の朝礼かチャットで全員にひとこと声をかけることです。「マイナ保険証を登録しているか、資格確認書が手元にあるかを確認してください」と投げかけ、グループCをあぶり出す。そこさえ動けば、あとは案内文を配るだけで大半が片付きます。
社会保険まわりの手続きは、この移行を機にデジタル前提へと変わりつつあります。あわせて 社会保険の適用拡大 の動きも、入退社の手続きに関わる重要な変化です。このタイミングで点検しておくと、来年以降の対応が楽になります。
